小田急3000形(6両)の解説

概要

 3000形は2002年の2月から運用開始した小田急の新型通勤電車で、当時JRで増備されていたE231系を基本に私鉄規格を採用し、登場した。この電車の登場により、2600形、4000形、9000形、5000形(一部)が引退していくこととなった。4形式分を置き換えたため、小田急では最大勢力を誇り、どこに行ってもみられる車両である。この置き換えにより、小田急車のVVVF化が一気に進み(8000形もVVVF化がされていたため)、数編成を残すのみとなった。大量増備が当初から予定されていたために、1編成における製造コストダウンを軸として製造されている。今までの小田急車とは異なり、前面に貫通扉がなかったり、戸袋窓が廃止されていたりと様々な点で小田急伝統のものが打ち切られ、当初は少なからず不評を買った。しかし、バリアフリー面や利便性は、当時はずば抜けてよかった。また、長い期間製造されていたため、時代に合わせた改良が施されていき、最終的には10次車までの車両が登場することになった。大きく分けると2種類に分けることができ、今回は1、2次車を初期車、3次車以降を後期車として紹介していく。6両編成も半分以上が後期車で、8両編成、10両編成は全部が後期車であるため、小田急3000形=後期車のイメージが強くなっているが、デフォルトはワイドドア車である1次車である。

 側面はE231系を基本構造とした車両と同じ銀色に、窓下に青帯が入る。車体上部に色がないことや、ドアにも青帯が入り、小田急の伝統を引き継いでいる。E231系を基本としてはいるものの、日本車輛が開発したブロック構造という工法を採用しており、この工法では、ドア部分、窓部分、屋根部分をそれぞれのブロックに分けて製造し、最後に溶接で組み立てる方式がとられている。この方式では、部品数を削減できるほか、狭い場所でも低コストで作ることができるという利点があるため、3000形ではこれを採用している。後に登場する5000形も同様の構造で川崎重工で製造されている。ステンレス板はできるだけ長持ちをさせるため、従来のステンレス車より外板を2.5mmと1mmほど厚くし、補強している。さらに、従来車より床を30mm下げ、高さを40mm高くしたことで、バリアフリー促進につながっており、人にやさしい車両をコンセプトに登場した。このことからも次世代車両として、位置づけられたのである。また、ヘッドライト、テールライトは1つにまとめられており、さらに前面フロントガラスの中に行先表示器とともに集約され、ここでもコストダウンを図っている。

 初期車に関してはドア幅が1600mmと通常より300mm広くなっているワイドドア車が存在している。2次車以降は通常車である(後述)。また、小田急通勤電車では初のワンハンドル運転台で、T字型ではなく、左に縮小されたハンドルである。小田急の運転席の計器類は独特な仕組みになっていて、進行方向で後部になると、計器類が動かなくなる。3000形でもこれは継承されている。また、小田急車の中では箱根登山線に入る通勤電車では初の自動放送搭載車、初のLCD車であり、さらには新宿まで入線するため、4両を増結させた場合は電連を介して相手先の編成にも自動放送が流れるようになっていた。当時では画期的な車両であった。

 3000形は現在の小田急ではみな同じ顔をしていて、同じような車内で同じような機器類を積んでいるため、飽きている人もいるが、よく見ると、長年にわたって作られたため、形態が多様で、また追加工事が施されたため他の次車と同形態になってしまった編成などもある。当たり前すぎてあまり注目はされないが今回はほとんどの次車が存在する6両編成を紹介する。8両、10両編成は別項目参照。

 新宿方面では通常は他形式の4両編成を増結させて入線するため、1~6号車でしか見られないタイプである。また、6両単独で運用することもあれば4両と増結して10両で運用することもあるため、小田急線内の幅広い運用を担当している。この形式は、モデルとなったE231系とある程度機器類を統一していることから、ブレーキ方式は電磁直通ブレーキとなっている。しかし、小田急は従来から箱根登山鉄道の箱根湯本まで直通していたため、純電気ブレーキ仕様車で統一されていたことから、当形式には純電気ブレーキを搭載している。運用の都合上、他形式と連結することも多いため、ブレーキ読み替え装置も設置した。他社の車両と同様に、連結する側(6号車)は小田急では密連が設置されている。これにより、前面スカートの形状が少々異なる。また、箱根登山線内の風祭駅では、当時は先頭の1号車しかドアが開かなかったため、乗降には駅員が非常用ドアコックを扱っていた。3000形のドアコックは車間部にあったため、ドア操作を扱いやすくするため、転落防止幌の下部が現在でも削られている。

 3000形は初期車の中でも最初の4編成はワイドドア車として作られた。これは通勤ラッシュに対応するために乗降をスムーズにさせ、停車時間を短くする狙いがあり、小田急線以外に東京メトロ東西線で採用された。しかし、大きな効果が得られなかったためか、2次車からは通常のドア幅に戻されている。以降はワイドドア車の製造は廃止となる。また、全駅ホームドア化促進により、ドアのサイズが他車と合わないワイドドア車は最終的にお荷物となってしまい、小田急1000形のワイドドア車は廃車も出ている。しかし、3000形と2000形はぎりぎりドア幅が大丈夫なことから廃車を免れ登場から20年以上もたった今も活躍している。現在では6両編成27本が活躍しており編成表は以下のとおりである。編成番号は新宿寄りの先頭車であるが、3000形は4両編成が存在しないため4両編成分の車番を空けた3250が先頭の車番となっている(5200形同様)。
 1、2次車、3次車以降でMT比も異なるため、別記載してある。また、1、2次車においては、片方の台車のみにモーターがついている、0.5M方式を採用しているため、そのモーター付き台車の位置は下の絵を参照のこと。

 3次車以降は大幅な仕様変更が施されたため、MT構成比も変更になっている。続番で作られてはいるが、1~3号車の番号に少々の差がある。また、主電動機も変更され、クーラーも大容量化されている。車内は2次車とほぼ同様であるが、ドア周りにLCDが付くなどの改良点は多々見受けられる。これらに関して詳しくは後述する。

機器類

 主電動機は小田急伝統の三菱製である(後述)。この3000形は増備されていく上で、3種類の電動機が登場することになる(混載している編成はない)。ただし、補助電源装置は次車数に限らず同じものである。1次車と2次車の電動方式は珍しく、重量分散をするためにパンタなし車両の片方の台車にのみ動力を設置している0.5M方式を採用している。パンタグラフはシングルアーム方式で、他形式と同じPT-7100型を採用している。8000形や1000形とは台座の形状が違うため、別物を付けているように見えるが同じものである。クーラーはCPU-705型を3258編成まで使用している。3258~3262編成は大容量化され、CPU-709型を使用、それ以降はさらに大容量化された710型を使用しているが、見た目はほぼ同じである。行先表示器は3色LED式で、7次車以降はフルカラーLED式となっていて、側面幕は速度が50キロ以上に上がると消えるようになっている。小田急では回送や試運転表示も50キロ以上になると消える仕組みとなっていて、業務用幕が走行中に消える珍しい電車となっている。

登場後の改造など

 2004年ごろから1、2次車に対して前面の帯が細いものに変更されている。これは3次車以降が登場した時に、合わせたためである。なお3次車以降は細帯で登場しているため、貼り換えられた経歴はない。2009年頃からは小田急開業80周年を記念して全編成に対して新しい会社ロゴマークが帯の上と前面に貼られている。2016年頃からは千代田線直通延長と複々線完成に伴い、全編成で行先表示器の表示方法が更新された。これにより「各停」は「各駅停車」になり、書体も明朝体からゴシック体に改められた。同時に1次車、2次車の一部の編成において行先表示器がフルカラーLED化された。2018年頃からは4次車以降の編成を対象に全ドア上にLCDの2画面化が行われている。これによりドアチャイムも変更になっており、JRの3点式チャイムになっている。同時に帯色の変更がされており、1、2次車は全編成がハワイアンブルーからインペリアルブルー帯となった。2010年頃には8次車として登場した3278~3282編成において、中間車4両を組み込み、10両化工事が行われた。これにより、本来は6両編成が32本あったが、27本に減少している。なお、これらの編成においては8、10両編成の項目で記述する。

編成ごとの概要

3251編成

 3000形のトップナンバーで、2600形の2652編成の置き換えで登場した。3000形のデフォルトとなる形態であるが3000形の中では数少ないタイプである。1次車のフルカラーLED、車内照明LED化を最初に行った編成である。鉄道模型ではグリーンマックスがデビュー当初の姿を製品化したモデル編成である。

3252編成

 3251編成と同形態の1次車で、2600形の2661編成の置き換えで登場した。グリーンマックスが現在形の一番近い姿で製品化したモデル編成である。

3253編成

 3251編成と同形態の1次車で、2600形の2669編成の置き換えで登場した。グリーンマックスが最初に製品化した3000形初期車のモデル編成である。また、行先点灯化した際の再販品のモデル編成でもある。

3254編成

 3251編成と同形態の1次車で、2600形の2662編成の置き換えで登場した。1次車の最終編成でこの編成の登場をもって小田急で作られるワイドドア車は最後となった。グリーンマックスがロゴマークなしの姿で製品化したモデル編成である。過去に騒音カバーを付けて試運転のみをやったことがある編成であるが、3263編成にその場を譲り、現在の姿となっている。

3255編成

 3000形の2次車で、2600形の2653編成の置き換えで登場した。側面片側ドア数は変わらないものの、ドア幅が通常サイズ(1300mm)に戻った最初の編成で、1次車とは窓配置から大幅な変更がされ、小田急で最初の戸袋窓廃止されたタイプとなった。また、座席の柄や仕切り板の形状も変更となっており、内装も大きく変更されている。2次車は、1つの次車内で一番編成数が多いタイプであるが、1次車と同様に6両編成しか存在しない稀少編成である。初期車の中で最後までハワイアンブルーで残っていた編成である。

3256編成

 3000形の2次車で、2600形の2665編成の置き換えで登場した。3255編成と同形態である。以降の編成はこの姿で本格的に量産化される。

3257編成

 3000形の2次車で3255編成と同形態である。連結面の電連を1段式から2段式に最初に改造され、スカートの形状が少々変更された編成である。以降小田急全編成にこれが波及していくことになる。2600形の2668編成の置き換えで登場した。

3258編成

 3000形の2次車で、2600形の2667編成の置き換えで登場した。3255編成と同形態である。この編成から外観上の差はないが、クーラーと補助電源装置が大容量化されている。1、2次車のうち、3258編成までの全編成において行先表示器がフルカラーLEDのものに交換されているが、この編成のみまだされておらず3色LEDのままである。

3259編成

 3000形の2次車で、2600形の2672編成の置き換えで登場した。2次車でも後期型といわれるタイプで、この編成から側面方向幕が大型化され、従来車は交互表示方式などを使って表示をしていたが、この編成以降からは様々な表示が一度にできるようになった。

3260編成

 3000形の2次車で、2600形の2671編成の置き換えで登場した。3259編成と同形態である。また、グリーンマックスが2次車で最初に製品化したモデル編成である。

3261編成

 3000形の2次車で、2600形の2663編成の置き換えで登場した。なお、この編成の登場をもって2600形の置き換えは完了した。3259編成と同形態である。

3262編成

 3000形の2次車で3259編成と同形態である。4000形の4258編成の置き換えで登場した。なお、これが4000形初の廃車である。また、2次車、3000形の初期車はこの編成をもって増備終了となる。

3263編成

 3000形の3次車で、4000形の4253編成の置き換えで登場した。この編成から大幅な仕様変更が施されている。内装周りの仕様変更は少なかったものの、外観上の変更点は多い。3000形のイメージとなっている前面大型スカートはこの編成が初で、車掌室下のはしご部分も一体化されている珍しいタイプである。また、主電動機やMT構成も4M2Tから3M3T構成に変更になっており、0.5M方式が解消されたほか、小田原方車番が2次車までは3500番台だったが、3次車以降は3400番台となっている。さらに前面の帯が細帯になって登場したのもこの編成からで、これについては既存車にも反映されている。
 登場時直後から騒音カバーを付けて走り、ロマンスカーVSEのような床下になっていたが、効果が得られず、電動車の台車のみになった。それでも効果を得ることができず、全密閉式モーターが開発されるとともに、その主電動機に交換され、現在では騒音カバーは撤去されてしまった。なお、台座だけは電動車のみ残っている。

3264編成

 3000形の3次車で、4000形の4254編成の置き換えで登場した。3次車では唯一なにも改造されないまま原形をとどめている編成である。

3265編成

 3000形の3次車で、4000形の4259編成の置き換えで登場した。小田急と三菱電機が共同で開発した全密閉式主電動機を最初に交換した編成である。それ以外は特に改造などはされていないため、3263編成と同形態である。2005年の夏頃に、ごく短期間だけ騒音カバーを付けた経歴があるが、台座跡は存在しない。

3266編成

 3000形の3次車で、2600形の2670編成の置き換えで登場した。3264編成と同形態である。1号車先頭部には江ノ島線内で起きたプリウスとの衝突事故の跡が残っている編成である。

3267編成

 3000形の4次車で、4000形の4252編成の置き換えで登場した。この編成から車内ドア上にLCDが設置されているが、各ドア上ではなく、3次車のように1つおきに取り付けられている。現在では全ドア上が2画面LCDに交換され、ドアチャイムもJRと同じ3点式チャイムになったため、4~6次車は区別がつかなくなった。2019年度には帯色もインペリアルブルーに交換された。また、走行中に側面方向幕が消えるのはこの4次車以降で採用されたシステムだが、後に既存車、他形式にも反映された。

3268編成

 3000形の4次車で、4000形の4260編成の置き換えで登場した。帯の交換はされていないため、外観上は原形のままである唯一の4次車である。

3269編成

 3000形の5次車で、9000形の9409編成の置き換えで登場した。この次車から連結面の電連が2段式のものを本格採用していて、東武30000系に続く私鉄では珍しい2段電連採用車両となった。なお、既存車も全編成改造された。さらに、試験的に取り付けられていたLCDは本格採用となり、全ドア上に設置されることとなった。現在ではLCDは2画面化されている。以上の観点から6次車と同仕様になっているため、区別がつかなくなっている。

3270編成

 3000形の5次車で、9000形の9406編成の置き換えで登場した。3269編成と同形態である。鉄道模型ではグリーンマックスが改良版のキットで製品化しているモデル編成である。

3271編成

 3000形の5次車で、9000形の9403編成の置き換えで登場した。3269編成と同形態である。この編成の登場により、4000形の置き換えも完了となった。

3272編成

 3000形の5次車で、9000形の9408編成の置き換えで登場した。3269編成と同形態である。鉄道模型ではグリーンマックスが3000形の大型スカート車の完成品を発売した時のモデル編成であった。

3273編成

 3000形の6次車で、9000形の9402編成の置き換えで登場した。5次車と6次車は続けて製造されていたため、大きな変更点はないが、優先席に手すりが増設されている。また、現在では車内のLCDが2画面化されており、4、5次車と区別がつかなくなっている。

3274編成

 3000形の6次車で、9000形の9405編成の置き換えで登場した。3273編成と同形態である。

3275編成

 3000形の6次車で、9000形の9401編成の置き換えで登場した。6次車で唯一帯色がインペリアルブルーに交換されている編成である。帯以外は3273編成と同形態である。

3276編成

 3000形の7次車で、9000形の9404編成の置き換えで登場した。このタイプからは行先表示器にフルカラーLEDが採用されており、表示が見やすくなっている。行先表示器以外は6次車と大きな変化はない。7次車で唯一帯色がインペリアルブルーに交換済みで、車内ドア上のLCDも2画面化されている。

3277編成

 3000形の7次車で、9000形の9407編成の置き換えで登場した。3276編成と同形態であるが、帯色は変更されていない唯一の6両編成である。現在6両編成で残っている3000形の最終編成である。7次車として製造された6両編成は4編成あり、3278編成以降の残り2編成は、現在は10両化されているため、8、10両編成記事を参照。

おわりに

 どうでしょうか。小田急3000形は、現在でも小田急の最大勢力を誇る主力電車で、現在の小田急では当たり前となっている機器類や設備を最初に採用した形式でもあります。今回は6両編成のみを書きました。6両編成は、本来は32本(3251~3282編成)が登場していて、9000形までの6両編成と5200形の数編成が置き換えられました。しかし、小田急の新宿口輸送力増強に伴い、6+4両編成の10両組成を減らし、10両固定化する方針になってしまったため、3278編成以降は10両編成化されてしまいました。また、3280~3282編成はまた別の次車で少々見映えが変わった編成でしたが、こちらも10両編成化されたため、8、10両編成記事で解説いたします。
 現在では小田急の主流となっている3000形ですが、貫通扉がなかったり、戸袋窓も廃止されたり、デザイン面でも様々な小田急伝統のものを失った最初の形式でもありました。そんな3000形ですが、様々な試験が行われ、様々な装備が施され、小さな改造が行われたりし、現在に至っています。また、編成数は多く、見た目はほとんど同じに見えますが、次車は多く、時代に合わせた改良がたくさん施されていて見ていてとても奥の深い形式でもあります。あまり話題にはならない形式ですが、小田急で3000形を見た際はぜひ車内や外観を見渡してみて細かい部分も見てみてください。

※2021年3月10日、フォロワーさんからの情報提供により一部の内容を更新いたしました。ご指摘くださいましてありがとうございました。

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西谷ԅ( ˘ω˘ ԅ)

アラサー電車オタク\( 'ω' \ )主に撮り鉄を趣味にしています。SNSではブログ更新情報のほか、普段の鉄活についてもつぶやいています\( 'ω' )/

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