概要
小田急1000形は1988年に小田急に登場した通勤電車で、それまで製造されていた8000形のステンレスバージョンという位置づけである。また、当時千代田線に直通していた9000形の置き換えも考慮されており、仕様が統一されている部分もある(一部の編成に直通対応機器を取り付けていた)。そのため、9000形と8000形を足して2で割ったようなデザインである。小田急では初のステンレスカーでかつ、初のVVVF主電動機を採用した形式であったため、大きく話題となった。ステンレス面はダルフィニッシュ仕上げという光沢がないものを採用しており、視認性が考慮されている。この光沢がない仕上げ方法は4000形まで続くこととなる。さらには他形式にはない工夫がされており、側窓と戸袋窓の高さがすべて統一されている細かい部分まで小田急が力を入れた形式である。これにより、前から見たときに、窓枠が1直線にきれいに並んで見える他社にも例を見ない珍しい特徴がある。
現在の運用上では、小田急線内では4両単独の運転は箱根登山線内と深夜に本厚木まで1往復あるだけであり、通常は6両編成と連結をして新宿まで走ってくる。4+4で8両編成を組み各駅停車で運用し、4+6で10両編成を組み急行などの優等で運用するなど、様々な両数があることを上手く活用し、幅広い運用をこなしている。
車内はこれまでの形式とは違い、赤系統を基調としている。壁紙は白色で座席は赤色で、さらに小田急では初となる低めの仕切り板が設置された。ドアも白色の壁紙が貼られており、暖かみを感じる車内となっている。
4両編成は19本が登場し、編成表は以下のとおりである。ただし、後年になり、廃車になった編成や更新された編成、箱根登山線用になっている編成もいるため、該当する編成は備考欄に記述してある。4両編成は新宿方にも小田原方にも電連が装備されており、4+4で8両を組むこともできる。また、8000形では6両と4両は同数であるが、1000形では、既存の形式の両数増発対応も兼ねているため、4両編成が圧倒的に多く存在している。
機器類
1000形の特記すべき事項であるが、小田急では初のVVVFインバータ主電動機を採用した形式である。三菱製のものを採用していて、新京成の8800形とよく似た音がする。補助電源装置は主電動機の横に設置されており、2両ユニット方式ではなく、1両独自ユニット方式である。クーラーはCU195型で、8000形と同じものを採用しているが、8000形はA型、1000形はC型というもので、改良版という位置づけである。そのため、外観がそっくりである。台車はFS-034型を採用している。小田急では最後のボルスタ付き台車である。
なお、1000形は2014年度から大規模更新を受けており、機器類などが一層されている。台車は同じものの、主電動機や補助電源装置、行先表示器は新しいものとなっているため、大きく見た目が異なっている。ただし、更新後の主電動機も三菱製である。
登場後の改造
1000形を代表する改造といえば、大規模更新があげられる。1000形は2014年時点で登場から20年が経過しており、8000形と同様に車両に延命工事を施すこととなった。かなり大規模工事であるため、更新前と更新後では明らかに別形式のような差がある。本来は全編成について順次行っていく予定であったが、予想以上に手間とコストがかかってしまったため、一部の編成は廃車となっている。
更新内容はとても大規模で、車内の床や壁紙、座席、つり革、ドアなど、機器類も台車を除いてドアエンジンから冷房装置まで、運転台やライト、帯まで、車体以外ほぼすべての機器類、設備類において新しいものに交換されている。文字だけでは伝わらないため、画像にて比較する。
編成ごとの概要
1051編成
1000形のトップナンバーである。検測車のクヤ31形との連結対応車であるため、小田原方のスカートの形が独特の形状となっている。
1052編成
1051編成と同形態の1次車である。現在では1252編成とともに10両固定化され、1096編成となっているため、現存しない。
1053編成
1051編成と同形態の1次車である。5000形の5055編成に置き換えられ、廃車となっているため、現存しない編成である。
1054編成
1051編成と同形態の1次車である。5000形の5054編成に置き換えられ、廃車となっているため、現存しない編成である。
1055編成
1051編成と同形態の1次車である。現在では1255編成とともに10両固定化され、1097編成となっているため、現存しない。
1056編成
1051編成と同形態の1次車である。現在では1256編成とともに10両固定化され、1095編成となっているため、現存しない。
1057編成
1051編成と同形態の1次車である。
1058編成
1051編成と同形態の1次車である。1次車で唯一赤色になった編成で、現在は箱根登山線に閉じ込めで運用されている。この箱根登山線用として運用されている編成は通常は新宿方面に乗り入れることもなく、小田原~箱根湯本をひたすら往復している。そのため、塗装も青帯ではなく、箱根にちなんだ赤色塗装となっている。これは車体の上から貼り付けたものであるため、妻面などの人の目に付かない場所は銀色のまま残っている。なお、車内などの設備面もそのままである。
この箱根登山のタイプにおいては、1000形の4両編成未更新車の中で唯一、自動放送が取り付けられている編成たちであり、長時間の駅停車時には車内で音楽を流すこともある。しかし、ドア上に案内表示器は設置されていない。
1059編成
この編成から2次車である。1次車との大きな変更点はなく、地下対応機器類が付いた程度のものである(後に撤去済み)。現在では赤色の塗装となっており、箱根登山線内に閉じ込め運用をしている編成である。元々は千代田線直通対応車として1988年に登場し、9000形を置き換えた。1992年頃には1090番台の登場により、地上線に返却されてからはずっと地上のままである。2020年の夏には期間限定で本線を走り、走行中には車内で音楽が流れるというとても話題となった編成である。
1060編成
1000形の2次車であり、1059編成と同形態である。現在は赤色となっており、箱根登山線内で運用されている。
1061編成
1000形の2次車であり、1059編成と同形態である。現在は赤色となっており、箱根登山線内で運用されている。この編成は、1090番台によって千代田線運用から外れはしたが、増発により復帰し、最終的に4000形が登場するまで千代田線直通用として運用された。箱根登山線転用直前まで直通運転に従事していた唯一の編成である。千代田線時代は1251編成とペアで運用されていた。
1062編成
4両編成の未更新車で残る唯一本線を走る1060番台の編成である。元千代田線対応車であり、1000形3次車のトップ編成である。2次車との仕様の差は特にない。千代田線時代は1252編成とペアで運用されていた。
1063編成
1000形の4両の中で2番目に更新をした編成。元々は3次車であり、千代田対応車であることから、1062編成と同形態である。千代田線時代は1253編成とペアで運用されていた。
1064編成
元々は3次車で千代田対応車であったため、1062編成と同形態である。千代田線時代は1254編成とペアで運用されていた。
1065編成
元々は3次車で千代田対応車であったため、1062編成と同形態である。千代田線時代は1255編成とペアで運用されていた。
1066編成
1000形の4両の中で最初に更新をした編成。元々は3次車であり、千代田対応車であることから、1062編成と同形態である。千代田線時代は1256編成とペアで運用されていた。
1067編成
元々は1000形の4次車で3次車との仕様の差は特にない。
1068編成
元々は1000形の4次車で、1067編成と同形態である。5053編成が登場したことにより廃車となったため、現存しない。なお、最後の活躍はロマンスカーミュージアムに歴代のロマンスカーをけん引する回送列車であった。
1069編成
元々は1000形の4次車で、1067編成と同形態である。4両編成の最終編成である。
おわりに
いかがでしたでしょうか。1000形は4両編成で最大勢力を誇っており、よく見かける車両として当たり前の存在になっています。そんな電車でも細かな点で差は多くあり、更にはリニューアルしたことによってさらに謎が深くなった形式でもあります。登場からはすでに30年以上たっていて、分類としては古参の電車になります。いつなくなってもおかしくはない車両で、さらに全編成を更新する予定もないので、徐々に数を減らしつつあります。皆様も1000形に乗ったときは、ぜひいろいろな部分を見てみてください。