東京メトロ1000系の解説

2021年2月20日

 東京メトロ1000系は2012年4月に第1編成、2013年5月から量産化され、01系を置き換えた銀座線の通勤電車である。大きな特徴としては世界初のハイブリッドSic機器類採用車、操舵台車を採用したことである。従来の古い銀座線のイメージを払拭させるために01系とは大きくデザインを変え、レトロをイメージし、黄色い車体に細めのオレンジ帯をまとうこととなった。この黄色は塗ったわけではなく、ステッカーであるため、車体のあちこちにつなぎ目がある。なお、車端部は貼られていないため、アルミの銀色が見える。

 さらに01系には前面部分にしかなかった行先表示機を側面にも設置し、どこへ行くかがわかりやすくなった。行先表示のうち、浅草行きの場合は到着番線によって地下から出る場所が違うため、浅草駅の到着番線の案内をスクロールで表示するようになっている。銀座線では登場当時からホームドア設置の予定があったため(2020年現在全駅設置済み)、非常用ドアコックを窓下から窓横に移動し、ホームドアがあっても容易に触れるようになっている。また、01系では冷房化の際に冷房を下から付けてしまったため車両両端の天井が11cmほど低くなっていたが、1000系では車内を広く見せるために三菱電機が薄型クーラーを特別に開発し、約5cmに収まっている。また、車内にはLCDを配置し、広告数を増やしたり、車いすスペースの増設を行ったりして利便性の向上を図った。
 時代が進むにつれ、さらに利便性を向上するため、Wi-Fiと防犯カメラの設置、LCDの3画面化を全編成に対し実施し、現在に至る。

 車内はレトロをイメージしたわけでもなく、最新機器の取入れが優先されたためか、明るみのある車内となった。座席はオレンジ色で銀座線カラーとし、壁は白色となった。車内の貫通扉には銀座線沿線の観光地などの絵が貼ってある。内容は渋谷のハチ公、表参道のイチョウ、新橋旧駅、銀座の街灯、旧日本橋、上野動物園、浅草寺雷門である。傾斜式ドアなので、勝手に閉まるようになっている。LCDを最大限まで縦にするように設置したことと、冷房が薄型になったためか、広々とした車内に見えるが、実際は先代の01系と同寸法である。

銀座線とは

 ざっくりと説明すると・・・。東洋初の地下鉄で唯一戦前から存在する地下鉄でもある。そのため、当時の技術ではまだ深いところは掘れなかったことから、地下の浅いところを走行している。よって、地盤が低い渋谷では地上3階に出てしまう。これは渋谷を通る電車の中で一番地上から高い場所を走っているため、よく「一番高いところを地下鉄が走る」という話のネタにもなっている。トンネルも銀座線だけ他路線と違う構造になっており、ほとんどの区間で鉄筋コンクリート構造である。そのため、走行中のトンネルでA、B線の仕切りに鉄筋が多く見受けられる。また単線トンネルが少なく、戦前当時の地下鉄技術がどのようなものであったかなどを窺い知ることができる。このようにしてメンテナンスの省略化が図られている。また、銀座線は、東京の地下鉄の中で唯一踏切を持つ路線でもある。しかし、この踏切は客扱いする場所にはなく、上野検車区の地上方面入口にあるため、普段見ることはできない。

東京メトロ1000系の集電方法

 当時では大きなトンネルを掘ることができなかったため、架線を設置できないことから、ヨーロッパで主流の第3軌条方式というものを採用し、架線を省略した。第3軌条方式とは、線路の横にもう1本の線を設け、台車の横から集電靴を当てて集電するという方式である。後に世界中でもたくさんの地下鉄が開業していくが、架線を引いている地下鉄は世界でも珍しくほとんどが第3軌条方式である。日本では、架線が主流なため、「銀座線にパンタグラフがない」と話題になることがよくある。ただし、これが通用するのは日本周辺の数国だけである。集電靴を使って横から電気をとるため、線路幅は広く、標準軌(1435mm)となっている。集電靴は台車の1台につき1つずつになっており、いずれも両端の車輪の外に集電靴が設置されている。設置場所は以下の表の●で示した部分である。

操舵台車

 1000系特有の特徴ときたらやはりこの操舵台車である。銀座線は小さなトンネルで急なカーブが数多くあり、曲がるときに台車から出るフランジ音が騒音になるなどの問題があった。これを少しでも解消するために発案されたのが操舵台車であった。東京メトロと住友金属が協力して作り上げた台車である。1台車の2軸のうち、それぞれの内側の台枠と車輪支持装置の間に新たに縦方向のアームを設けそれが伸び縮みすることでその片軸がカーブに合わせて左右に動き、曲がりやすくする方式である。これにより、スムーズにカーブを通過することができるようになり、低騒音化が図られ、自動放送が聞こえるようになった。操舵台車の操舵軸がついているのは以下の表の●で示した部分である。

その他機器類

 Sicの世界初採用車両というのもこの電車の特徴である。最初は主電動機ではなく、補助電源装置としての採用だったが、後に主電動機も採用されるようになった。Sicを使うことで、スイッチング速度、抵抗を抑えることができるため、機器類の小型化を図ることが可能である。銀座線は小さいトンネルで小さい車両なので、機器類の小型化は必須条件であり、これを開発することとなった。なお、2次車以降での採用なので、第2編成以降が該当する。これによりエネルギー消費率が削減されている。また、1000系は編成中の動力以外のすべての電力をこの補助電源から賄っている。そのうえ車体が小さいため、機器室を設ける必要があり、それを編成中に2台設置(1、6号車の連結部)している。1000系は全号車が電動車として扱われているが、全部の台車に電動装備があるわけではない。電動装備がある車輪は、以下の表の●で示した部分である。

 1両の長さは16mで、それが6両編成で走っている。合計で96mと20m車に換算すると5両編成程度である。そのため、より多くの列車を走らせることで、客裁きをしている。詳細は後述。

 前代の01系が38本だったことに対して、2本追加されているため01系を置き換えなかった編成が存在する。これは、銀座線ホームドア取り付けによる所要時間の増大が原因である。01系の置き換え対象表は以下のとおりである。

 現在は、全部で全6両40編成が上野検車区に所属している。編成表は以下のとおりである。また、検査などは引き続き中野工場で行われるため、赤坂見附~中野坂上間は丸ノ内線を走行する。基本的に日中の定期列車の合間を縫って回送されることが多い。

編成ごとの概要

第1編成(51編成)

 1000系の唯一の1次車である。この編成を1年間走らせ、銀座線で様々な試験を行い、1102編成以降の量産につながった。見た目は他編成と同一だが、機器類が少々異なっていて、補助電源装置にsicを採用していないことが特徴であるが、見た目ではわからない。ただ、新規導入に先立って、様々な試験を行う際は、この編成で行われる。車内照明が電球色になっていることが特徴である。一時期は1~3、4~6号車で車内照明が違うものを設置していることもあった。

第2編成~第20編成(52~70編成)

 1000系の本格量産型の2次車である。1次車との大きな見た目の差はない。車内照明は白色である。1102編成の先頭にはローレル賞のプレートが貼り付けられている。また、補助電源で世界初のSicを採用したタイプである。6両編成19本が該当し、銀座線では3次車とわずかな差で最多編成を誇る。

第21編成~第27編成(71~77編成)

 1000系の量産型の3次車で、今までの1000系に少々仕様変更が加えられた。俗に1000系後期型と呼ばれるタイプである。このタイプからVVVF装置にもSicが採用されることとなり、さらには電源装置も変更され、独特の音を放つ。PMSMも効率化させることによって1000系の初期車よりもさらに省エネ化を図った。車内照明も調光機能付きLED照明となり、通常は4000Kの電球色となっている。このため、地下ですれ違っていても車内照明の色が違うことから区別することができるほどである。また、行先表示機も従来の白色LEDからフルカラーLEDとなり、表示している文字の色が微妙に青みを帯びている(写真ではわかりにくいです)。また、浅草行き表示の時の到着番線案内とのスクロール表示がこれまでの編成に比べて緩やかになっている。

第28編成~第38編成(78~88編成)

 上記と同様3次車である。この78編成以降から全号車に車いすスペース設置編成となっている。また、84編成以降の登場車両からはドア上LCDが3画面で登場している(後に既存編成も3画面工事行った)。さらには新製時から、地震計測器が取り付けられていて、一定以上の強い地震を計測したときは、非常ブレーキがかかる設定となっている(後に既存編成にも追加)。また、バッテリー機能を追加し、停電時に最寄りの駅まで自走できるようになっている(後に既存編成にも追加)。

第39、40編成(89、90編成)

 こちらは4次車である。東京地下鉄開業90周年に合わせて外観と内装をさらにレトロ調を加えて仕様変更した編成である。臨時電車などでも使用されるために、駅の到着時に電気が消える銀座線を再現できるように非常灯やつり革が当時の地下鉄1000系のような形となっている。臨時電車として走るときは、到着時に電気が消えることも再現することができる。内装もレトロ調を追加し暖色系に緑の座席と、むかしの銀座線そのままのデザインとした。車番や製造工場のプレートの書体も当時と同じに揃え、より一層レトロ感を引き出している。また、車体装飾もよりレトロ感を増すため、ライトケースの形を変え、ヘッドライトは電球色の1灯を採用している。さらには帯も、既存編成は01系と同様のオレンジ帯を巻いているが、特別仕様車には帯の代わりに、地下鉄1000系の帯ともいえる黄色い装飾をステッカーで再現している。窓枠も黄色になり、より一層力が入っている。これらの編成は銀座線で通常運用に就いているため、普段から見ることはできる。しかし、2編成のみの存在で、わずか5%の確率でしか当たらないため、ラッキー電車として記事に載ることが多い。いずれの編成も通常通り運用するため、既存車と同じスペックはあり、設備系統は3次車と同じである。ただし、行先表示機がフルカラーLEDから白色LEDに戻されている。1~3号車の車内にはドア上以外にもドアと側窓の間に広告ディスプレイが設置されていて、常にCMが流れているが、こちらはドア上の広告モニタとは連動しておらず、違う広告を流している。最初に報道陣にこの車両が公開された時には、側窓上の帯がドア部分で途切れている。さらに紋章はメトロマークがついていたが、90周年を越えたあたりから、両編成共に側窓上の帯がドア上も通るように、紋章が東京地下鉄道のものにそれぞれしれっと貼り替えられている。画像を検索してよく見てみると、違いが分かるので、ぜひ探してみてください。

おわりに

 銀座線は01系が引退し、ホームドア完備が早急に完了し、特設サイトまで立ち上げられたほど力を入れられている路線でもある。また、東京メトロの路線の中でも一番利用者が多い。平日朝夕は2分ヘッド、日中は土日も平日も3分ヘッド、平日20~0時までは4分ヘッドと、驚異的な本数の電車が運行されている。また、車庫は渋谷と上野にあり、その他に留置線が7本ほど中間駅にある。現在40編成を保有しているが、線路本数からして39本が限界であり、ホームでの留置も増えていて飽和状態である。誰もが当たり前のように乗る銀座線だが、廃駅跡や謎の線路などが多くあり、非常に興味深い路線でもある。ぜひ参考にして乗ってみてください。

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TAIKI

乗り鉄から模型鉄、撮り鉄、時刻表鉄などなどなんでもやっています。飛行機も鉄道同様に大好きで、それらのことしか頭にない話ネタの尽きない人です。

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